良い施設って、どんな場所?

良い施設って、どんな場所?

「良い施設」と聞くと、皆さんはどんな場所を思い浮かべるでしょうか?

設備がきれいな施設。
職員が優しい施設。
イベントがたくさんある施設。
利用者さんが楽しそうに過ごしている施設。

もちろん、どれも大切なことです。

しかし、障害福祉の現場で働いていると、ふと考えることがあります。
「本当に良い施設って、それだけなのだろうか?」

私は、良い施設とは「何かをしてあげる場所」ではなく、その人がその人らしくいられる場所なのではないかと思います。

「職員にとって良い施設」と「利用者にとって良い施設」は違う
施設を運営する側から見ると、

「予定通りに活動が進む」
「トラブルが少ない」
「利用者さんが職員の言うことを聞いてくれる」

そんな状態は、非常にありがたいものです。
でも、それが必ずしも利用者さんにとって「良い環境」とは限りません。

例えば、「今日は活動したくない」と言った利用者さんに対して、「みんな参加していますよ」「せっかくだからやりましょう」と参加を促し続ける。

もちろん、必要な声掛けもあります。
しかし、その人にとっては、「参加すること」より「自分の気持ちを尊重してもらうこと」のほうが大切な場合もあります。

施設がスムーズに回ることと、その人が安心して過ごせること。
この二つは、似ているようで少し違います。

「何もしない時間」も大切
福祉施設では、どうしても、

「今日は何をする?」
「次はこの活動をしましょう」
「せっかくだから参加しましょう」

と、利用者さんに何かを提供しようとします。

もちろん、活動や支援は大切です。
しかし、良い施設には、何もしなくても許される時間も必要なのではないでしょうか。

ただ座っている。
窓の外を眺めている。
職員と少し話す。
他の利用者さんの様子を見ている。

そんな時間も、その人にとっては大切な時間かもしれません。
「何かをしている=充実している」とは限らないのです。

「失敗しても大丈夫」と思える場所
もう一つ、良い施設に必要なのは、失敗しても大丈夫だと思える安心感です。

作業を間違えてしまった。
人と喧嘩してしまった。
気持ちをうまく伝えられなかった。
約束を忘れてしまった。

そんなときに、「また失敗した」と責められる場所ではなく、「じゃあ、どうしようか」と一緒に考えてくれる場所。それだけでも、人は安心できます。

支援とは、失敗をなくすことだけではありません。
失敗したときに、一緒に立て直すことも支援です。

職員も「完璧」でなくていい
そして、意外と大切なのが職員側です。

利用者さんには、

「失敗しても大丈夫」
「自分らしくていい」

と言いながら、職員自身が、

「失敗してはいけない」
「常に正しい支援をしなければならない」

と追い込まれていたら、施設全体が苦しくなっています。

支援には、正解がないこともたくさんあります。

昨日はうまくいった方法が、今日はうまくいかない。
Aさんは効果があった方法が、Bさんには合わない。

そんなことは珍しくありません。

だからこそ、「これで良かったのかな?」と職員同士で話し合える環境が必要です。

良い施設とは、職員が「分からない」と言える施設でもあるのだと思います。

利用者さんが「ここにいていい」と思える場所
結局のところ、良い施設とは何なのでしょうか。

私は、「ここにいていい」と思える場所なのではないかと思います。

元気な日もある。
機嫌が悪い日もある。
失敗する日もある。
何もしたくない日もある。
誰かと話したい日もあれば、一人でいたい日もある。

そんな日々も変化も含めて、「あなたはあなたで大丈夫」と思ってもらえる場所。
それが、福祉施設の大きな役割なのではないでしょうか。

「良い支援」より先に「良い場所」
私たちは、つい「良い支援をしなければ」と考えます。
もちろん、それは大切です。

でも、その前に、「この場所は安心できる場所なのだろうか?」と考えてみることも必要です。

利用者さんが笑っているから良い施設なのではない。
職員が何でも解決してくれるから良い施設なのでもない。

その人が、無理をしすぎず、失敗を恐れず、自分の気持ちを出すことができる。
そして、「明日もここに来てもいいかな」と思える。

そんな場所こそ、本当の意味で「良い施設」と呼べるのかもしれません。

支援の方法を考えることも大切。
活動内容を考えることも大切。

でも、その前に一度、「この施設は、利用者さんにとって“居場所”になっているだろうか?」と考えてみる。そこから、より良い福祉が始まるのではないでしょうか。