「まだ大丈夫」のその先を考える

「まだ大丈夫」のその先を考える

障害福祉の現場で、とても難しい問題があります。
それは、「ご家族はまだ支援できると思っている。でも、現実には少しずつ難しくなってきている」という状況です。

たとえば、利用者さんの身の回りのことを、これまでずっとご家族が支えてきたとします。

病院の付き添い。
買い物。
金銭管理。
食事の準備。
生活のこと。
困ったときの対応。

今までは、それが当たり前にできていた。
だから、ご家族からすると、「今までできていたんだから、これからもできる」と思うのは、決しておかしいことではありません。むしろ、「家族だから支えてあげたい」という気持ちがあるのだと思います。

しかし、ここに難しさがあります。

家族にも「年齢」がある
利用者さんだけが年齢を重ねるわけではありません。
ご家族も同じように年齢を重ねていきます。

今は車で病院に連れて行けても、何年後かには運転が難しくなるかもしれない。
今は買い物に行けても、体力的に難しくなるかもしれない。
今は何かあったときに対応できても、
仕事や自身の生活との両立が難しくなるかもしれない。

そして、もっと先には、「家族自身が支援を受ける側になる」可能性もあります。

これは誰が悪いという話ではありません。
誰にでも起こることです。

だからこそ、「家族が今できているから大丈夫」だけで考えてしまうと、将来的に困ってしまうことがあります。

「できる」と「続けられる」は違う
ここは、とても大切なところだと思います。

ご家族が今できていることでも、「これから10年、20年続けられるか?」と考えると、答えが変わってくることがあります。

今はできる。でもずっとできるとは限らない。
だから福祉の役割は、「もう家族では無理ですよ」と伝えることではないと思います。

むしろ、「今はできています。でも、これから先も安心して生活するために、少しずつ他の方法も考えておきませんか?」と伝えることなのではないでしょうか。

ご家族の「まだ大丈夫」を否定しない
ここで難しいのが、ご家族への伝え方です。

「もう家族だけでは無理です」
「ご家族が支援するのは限界です」

と一方的に言ってしまえば、「家族のことを否定された」と感じてしまうかもしれません。それでは、本当に必要な話し合いができなくなってしまいます。

だからこそ、「今できていること」をまず認める。
そのうえで、「今後はどうしていく?」を一緒に考える。

この順番が大切なのだと思います。

「今までご家族が支えてこられたからこそ、今の生活があるんですよね」
「その生活をこれからも続けていくためには、どんな支援があればいいでしょう?」

そんなふうに考えていけば、「家族の支援をなくす」のではなく、「家族だけに負担を集中させない」という方向に話を変えることができます。

家族に「手放してもらう」のではなく「一緒に支える」
障害福祉では、「家族から支援を引き離す」ように見えてしまうことがあります。
でも、本来はそうではないと思います。

家族ができることは、家族にしてもらう。
福祉ができることは、福祉が支える。
地域でできることは、地域で支える。
そして、できなくなった部分は、別の支援につなげていく。

つまり、「家族だけで支える」から「みんなで支える」へ変えていく。
これが大切なのではないでしょうか。

大切なのは「困ってから」ではなく「困る前」
実際にご家族が倒れてしまったり、急に支援できなくなってしてから、「どうしましょう?」と考えるのでは遅い場合があります。

だからこそ、何も困っていないように見えるときから話しておく。

「もしお母さんが入院したらどうする?」
「もし車に乗れなくなったら?」
「もし家族が支援できない日が続いたら?」

少し厳しい話に聞こえるかもしれません。
でも、これは「悪い未来を考える」ということではありません。
むしろ、「何かあっても大丈夫な未来を準備する」ということです。

「家族が頑張る」だけではない未来へ
家族が頑張ることは、とても大切です。
でも、家族が頑張り続けなければ生活できない仕組みになってしまうと、いつか誰かが苦しくなります。利用者さんも。ご家族も。そして支援する側も。

だからこそ、障害福祉には、「家族にもっと頑張ってもらう」のではなく、
「家族が頑張らなくても安心できる部分を、少しずつ増やしていく」という考え方が必要なのだと思います。

家族の愛情を否定する必要はありません。
家族が支えてきたことを否定する必要もありません。
ただ、「これからも家族だけで大丈夫なのか?」を一緒に考えていく。

そして、必要になったときに慌てないように、少しずつ支援の輪を広げておく。
それも、障害福祉にできる大切な支援の一つなのではないでしょうか。

家族から支援を奪うのではなく、家族が安心して支え続けられるように、福祉が一緒に支える。

これからの障害福祉には、そんな視点がますます必要になってくるのかもしれません。