障害福祉の現場には、さまざまな年代の利用者さんがいます。
20代、30代の若い利用者さんがいる一方で、50代、60代、70代といった年齢の利用者さんもいる。
当然、年齢が違えば、興味のあることも、体力も、生活してきた時代も、価値観も違います。
そんな中で、施設として一つの活動を提供しようとすると、
「若い人には物足りないかな?」
「年配の方には難しいかな?」
「みんなが楽しめる活動って、どうすればいいんだろう?」
という悩みが出てきます。
実は、この「全員に同じものを」という考え方こそが、施設のバランスを難しくしているのかもしれません。
「全員が楽しめるもの」を探しすぎない
例えば、レクリエーション。
若い利用者さんが楽しめるように、ゲーム性の高い活動をすると、年配の利用者さんには少し疲れるかもしれない。逆に、昔ながらの歌や簡単なゲームを中心にすると、若い利用者さんからすると「ちょっと退屈…」となることもあります。
ここで、「じゃあ、全員が楽しめる活動を探そう!」となるのですが、実際にはそんな万能なレクリエーションは、なかなかありません。
人間ですから、好みが違って当然です。だからこそ大切なのは、「全員が同じように楽しむ」ことではなく、「それぞれが自分なりに楽しめる余白を作る」ことなのではないでしょうか。
年齢で分けすぎないことも大切
もちろん、年齢による体力差や生活リズムなどを考慮する必要はあります。
しかし、「若い人だからこれ」「年配だからこれ」と最初から決めつけてしまうのも少し危険です。
例えば、60代の利用者さんがゲーム好きだったり、20代の利用者さんが昔の歌謡曲を好んでいたりすることもあります。年齢だけでは、その人の「好き」は分かりません。
支援者が持つべきなのは、「この年代なら、きっとこうだろう」ではなく、「この人は、何が好きなんだろう?」という視点なのだと思います。
「若い人に合わせる」「年配に合わせる」ではない
施設の中で世代間のバランスを考えるとき、「若い人を優先するのか」「年配の人を優先するのか」という話になりがちです。
でも、本来はどちらかを優先する必要はありません。
例えば、レクリエーションを一つの内容だけで完結させるのではなく、
「体を動かす時間」
「頭を使う時間」
「ゆっくり楽しむ時間」
など、いくつかの要素を組み合わせる。あるいは、同じ活動でも難易度を変えてみる。
パズルなら簡単なものと少し難しいものを用意する。
ゲームなら、参加方法を複数用意する。
そうすると、同じ空間にいても、それぞれが違う楽しみ方をすることができます。
これこそが、施設における「バランス」なのかもしれません。
「みんな一緒」が必ずしも平等ではない
福祉の現場では、「みんな平等に」という言葉がよく出てきます。
しかし、平等=全員に同じことをするとは限りません。
例えば、長時間座っていることが苦手な人と、ゆっくり座って過ごすことが好きな人。
難しい課題に挑戦したい人と、簡単な課題を安心して取り組みたい人。
同じ活動を全員に同じ方法で提供することが、本当に平等なのでしょうか。
むしろ、「その人が参加しやすい方法を用意する」ことのほうが、支援としては平等なのかもしれません。
世代の違いは「問題」ではなく「面白さ」にもなる
年齢の違いは、施設の中で面白い化学反応を生むこともあります。
年配の利用者さんが昔の遊びを教える。
若い利用者さんがスマートフォンの使い方を教える。
昔の音楽を一緒に聴く。
若い世代の流行を教えてもらう。
それぞれが「教える側」にも「教えてもらう側」にもなれます。
つまり、年齢差は「合わせなければいけない問題」ではなく、お互いの得意なことを交換できる機会にもなるのです。
「年配だから教えてもらう側」「若いから教える側」と決めつける必要もありません。
人によって得意なことは違います。
年齢ではなく、個人を見る。
ここが大切なのだと思います。
支援者が「ちょうどいい」を探し続ける
結局のところ、施設にとって完璧なバランスというものは存在しないのかもしれません。
今日は若い利用者さんが楽しめる活動。
次回は年配の利用者さんが楽しめる活動。
その次は、世代を超えて一緒に楽しめる活動。
そんなふうに、少しずつ変化させていけばいい。
大切なのは、「全員を同じところに合わせる」ことではなく、「それぞれが無理なく参加できる場所を作る」ことなのではないでしょうか。
施設という一つの空間に、年齢も性格も得意なことも違う人たちが集まっている。
それは、難しさでもあります。
でも同時に、とても面白いことでもあります。
若い人がいるから生まれる刺激があり、年配の人がいるから生まれる安心感もある。
どちらかに合わせるのではなく、お互いの違いを活かす。
その中で支援者が「今日はこれくらいがちょうどいいかな」と考え続ける。
もしかすると、施設に必要なのは「完璧なバランス」ではなく、その日の利用者さんを見ながら、少しずつ調整していく柔軟さなのかもしれません。
「みんな違うから難しい。」ではなく、「みんな違うから、面白い。」
そんな施設を目指せたら、世代の違いも一つの強みになるのではないでしょうか。

