障害福祉の現場では、「せっかく作業所に通い始めたのに、しばらくすると辞めてしまった」そんな場面に出会うことがあります。
特に精神障害のある方の場合、通所を始めた当初は意欲的に取り組んでいても、時間が経つにつれて休みが増えたり、通うことそのものが負担になったりすることがあります。
もちろん、すべての方に当てはまる話ではありません。
また、「精神障害だから辞めやすい」と単純に考えてしまうことも適切ではありません。
大切なのは、「なぜ続けられなくなったのだろう?」という視点ではないでしょうか?
「辞めた」という結果だけを見ると
支援する側からすると、
「また辞めてしまった」
「せっかく頑張っていたのに」
「もう少し続けてほしかった」
と思ってしまうことがあります。
しかし、本人にとっては「辞めた」のではなく、「今の自分には続けることが難しくなった」という場合もあります。
体調の波があったのかもしれません。
人間関係に疲れてしまったのかもしれません。
作業そのものが合わなかったのかもしれません。
朝起きることが難しくなったのかもしれません。
あるいは、本人自身も「なぜ行けなくなったのか」をうまく説明できないこともあります。
私たちが結果だけを見て、「続かない人」と判断してしまうと、その人が抱えていた「続けられなかった理由」を見落としてしまう可能性があります。
「頑張れば続けられる」とは限らない
福祉の現場では、どうしても「できることを増やす」という考え方が大切になります。
それはもちろん必要なことです。
しかし、精神的な状態というものは、いつも一定とは限りません。
昨日はできたことが、今日はできない。
先週は毎日通えたのに、今週は朝から動けない。
仕事中は問題なく過ごしていても、家に帰ると疲れ切ってしまう。
そんなこともあります。
だからこそ、「前はできていたのだから、今もできるはず」という考え方だけでは、本人を追い込んでしまうことがあります。
「辞めないこと」だけがゴールではない
作業所に長く通うことは、もちろん一つの大切な目標です。
しかし、それだけをゴールにしてしまうと、支援の幅が狭くなってしまいます。
大切なのは、その人が無理なく、自分らしく生活していけること。
そのために作業所が必要な人もいれば、今は少し休むことが必要な人もいます。
別の作業環境を探したほうがいい人もいるでしょう。
通所日数を減らすことで、長く続けられるようになる人もいるかもしれません。
「毎日通う」か「辞める」か。
本当は、その間にもたくさんの選択肢があります。
支援者にできること
「どうすれば辞めないようにできるか?」と考えることも大切ですが、「どうすれば、この人にとって無理のない通い方ができるか?」と考えてみることも大切です。
例えば、
・疲れがたまっていないか
・本人が作業をどう感じているのか
・人間関係で困っていないか
・通所すること自体が負担になっていないか
・本人の希望と施設側の支援内容が合っているか
・「頑張らなければ」という気持ちが強くなりすぎていないか
そんなことを、一つひとつ確認していく。
そして、本人が話しやすい環境をつくる。
それだけでも、見えてくるものは変わってくるかもしれません。
「続けられない人」ではなく
支援をしていると、つい「長く続けられたかどうか」で、その人の頑張りを評価してしまいがちです。
でも、本当に大切なのは期間だけではありません。
一週間しか通えなかったとしても、その一週間は本人にとって大きな一歩だったかもしれません。
一度辞めたとしても、また別の場所で何かを始めるかもしれません。
少し休んで、再び社会とのつながりを持つこともあるでしょう。
だから、「続けられなかった」ではなく、「今は続けることが難しかった」。
そんなふうに捉えるだけでも、支援の見え方は少し変わるのではないでしょうか。
最後に
作業所は、ただ「仕事を続けるための場所」ではありません。
人と関わる場所であり、生活リズムをつくる場所でもあり、自分の居場所になる場所でもあります。
だからこそ、通い続けることが難しくなったときには、「どうして辞めるの?」ではなく、「何があったんだろう?」と一緒に考えてみる。
そして、「辞めないための支援」だけではなく、「その人が自分らしくいられるための支援」を考えていく。
支援の正解は、一人ひとり違います。
「続けること」だけを正解にしないこと。
それもまた、本人に寄り添う支援の一つなのかもしれません。

