「知的障害と発達障害って、何が違うんだろう?」
福祉の仕事をしていると、そんな疑問を持つことがあります。
どちらも「障害」という言葉がつくため、
同じようなものだと思われることもありますが、実は見ているポイントが違います。
そして大切なのは、「どちらのほうが大変か」ではありません。
その人が「何に困っているのか」を知ることです。
今回は、知的障害と発達障害の違いについて、できるだけ分かりやすく整理してみます。
そもそも「知的障害」って?
知的障害とは、主に知的な能力や、日常生活・社会生活を送るための適応能力に困難がある状態をいいます。
例えば、
・新しいことを覚えるのに時間がかかる
・複雑な説明を理解することが難しい
・お金の計算や管理が苦手
・時間や予定を把握することが難しい
・一人で生活するための判断に支援が必要
・状況に応じて行動を変えることが難しい
といったことがあります。
ただし、ここで勘違いしてはいけないのが、「知的障害=何もできない」ではないということです。
できること、得意なこと、好きなことは一人ひとり違います。
繰り返し経験することでできるようになることもありますし、
本人に合った方法で説明すれば理解できることもたくさんあります。
では「発達障害」とは?
発達障害は、生まれつきの脳の働き方の違いなどによって、
コミュニケーション、行動、注意、感覚などの面で特徴が現れる状態です。
代表的なものとして、
・ASD(自閉スペクトラム症)
・ADHD(注意欠如・多動症)
・LD/SLD(学習障害・限局性学習症)
などがあります。
例えば、
「人との会話が苦手」
「相手の表情や気持ちを読み取るのが難しい」
「予定変更が苦手」
「集中することが難しい」
「逆に、一つのことにものすごく集中する」
「音や光、匂いなどに強く反応する」
「読み書きや計算など、特定の学習が極端に苦手」
といった特徴が見られることがあります。
こちらも、「発達障害だから、何もできない」わけではありません。
むしろ、特定の分野では非常に高い集中力や知識、能力を発揮する人もいます。
一番大きい違いは?
簡単に言えば、
知的障害は「知能機能や適応能力」に支援が必要になることが中心。
一方、発達障害は「認知・コミュニケーション・注意・行動・感覚などの特性」
によって生活上の困りごとが生じることが中心。
という違いがあります。
ただし、ここが少し難しいところです。
知的障害と発達障害は、必ずしも別々に存在するわけではありません。
例えば、発達障害のある人に知的障害を伴う場合もあります。
逆に、発達障害があっても知的能力には大きな問題がない人もいます。
つまり、「知的障害がある人は全員発達障害」でもなければ、
「発達障害の人は全員知的障害がある」ということでもありません。
「見た目」では分からないことも多い
福祉の現場で特に大切なのが、この部分です。
知的障害や発達障害は、外見だけでは分からないことがあります。
普通に会話をしているように見えても、
「実は相手の言葉を十分に理解できていない」
「その場では分かったように返事をしているけれど、後から何をすればいいのか分からなくなっている」
ということもあります。
反対に、「コミュニケーションが苦手だから、理解力も低い」とは限りません。
話すことが苦手でも、頭の中ではしっかり理解している人もいます。
だからこそ、「できないように見える」ことと「本当にできない」ことを、一緒にしてはいけません。
支援で大切なのは「障害名」より「その人」
例えば、
「この人は知的障害だから、こう支援する」
「この人は発達障害だから、こう対応する」
と決めつけてしまうと、かえって本人に合わない支援になることがあります。
同じ知的障害でも、説明すればすぐ理解できる人もいれば、何度も繰り返すことで理解できる人もいます。
同じ発達障害でも、人とのコミュニケーションが苦手な人もいれば、
コミュニケーションは得意だけれど、予定変更が非常に苦手な人もいます。
つまり、「障害名」はその人を理解するための一つの情報であって、その人そのものではありません。
「分からない」のではなく「分かり方が違う」のかもしれない
支援をしていると、
「何回言っても分からない」
「どうしてこんなことができないんだろう」
と思ってしまう場面があります。
でも、そこで一度立ち止まってみる。
「説明の仕方は、この人に合っているだろうか?」
「言葉だけではなく、見本を見せたほうが分かりやすいのでは?」
「一度にたくさん伝えすぎていないだろうか?」
そう考えるだけで、支援の見え方が変わることがあります。
「本人が分からない」のではなく、「こちらの伝え方が、本人に届いていない」という可能性もあるからです。
「できない」を探すより、「できる方法」を探す
福祉の仕事では、つい「できないこと」に目が向きます。
「これはできない」
「これも難しい」
「また失敗した」
でも、本当に大切なのは、
「どうすればできるのか?」
を考えることではないでしょうか。
口頭で難しければ、絵や写真を使ってみる。
一度に全部伝えるのが難しければ、一つずつ伝える。
予定変更が苦手なら、事前に伝える。
集中が続かないなら、作業を短く区切る。
こうした工夫によって、「できない」と思っていたことが「できる」に変わることがあります。
障害を知ることは、人を決めつけることではない
知的障害と発達障害の違いを知ることは、単に知識を増やすことではありません。
それは、「この人はなぜ困っているのだろう?」と考えるための入り口です。
障害名だけを見てしまえば、「知的障害だから」「発達障害だから」という見方になってしまう。
でも、その先にいるのは一人の人です。
好きなこともあれば、嫌いなこともある。
得意なこともあれば、苦手なこともある。
こだわりもあれば、本人なりの考えもある。
そして、できることもたくさんあります。
最後に
知的障害と発達障害には違いがあります。
でも、支援する側が最も大切にしたいのは、「障害の違いを覚えること」だけではありません。
「この人は何に困っているのだろうか?」
「どうすれば伝わるのか?」
「どうすれば本人らしく生活できるのか?」
そこを見ることです。
障害名を知ることは、スタート地点。
そこから、「この人自身を知る」ことが、本当の意味での支援につながっていくのだと思います。

