「ちゃんと説明したはずなのに伝わらない。」
「何度言っても話がかみ合わない。」
「質問に対して違う答えが返ってくる。」
こんな経験はありませんか?
職場でも、家庭でも、友人との会話でも、一度は経験したことがある人が多いと思います。そして、障害福祉の現場でもよく見らえる場面の一つです。
そんな時、多くの人は「ちゃんと聞いてくれない」「理解しようとしていない」と考えてしまいがちです。
でも実は、話がかみ合わない理由は「聞いていない」からからではなく、「受け取り方が違う」ことが原因の場合も少なくありません。
「伝えた」と「伝わった」は違う
私たちは普段、自分の中では当たり前だと思っていることを、相手も同じように理解していると考えてしまいます。
例えば、
「あとで片づけておいてね。」
という一言。
あなたは「30分後くらいかな」と思っていても、相手は「今日中でいいんだ」と受け取るかもしれません。
また、
「そこに置いておいて。」
と言われても、「そこ」がどこなのかわからない人もいます。
話し手は具体的に伝えたつもりでも、聞き手には曖昧に聞こえていることは意外と多いのです。
障害がある人だけの話ではない
「話がかみ合わない」と聞くと、発達障害や知的障害を思い浮かべる人もいるかもしれません。
しかし、これは障害の有無に関係なく、誰にでも起こることです。
忙しくて集中できない日。
疲れている日。
初めて聞く内容。
緊張している場面。
こんな時は誰でも話を聞き漏らしたり、勘違いしたりすることがあります。
つまり、「話がかみ合わない」のは特別なことではなく、人と人が関わる以上、自然に起こる出来事なのです。
こんな時、どう対応すればいい?
では、話がかみ合わない時はどうすれば良いのでしょうか。
①一度にたくさん話さない
「あれもこれも伝えなきゃ」と思うほど、情報量が増えてしまいます。
一度にたくさん説明されると、どこが大事なのかわからなくなることがあります。
まずは一つだけ伝える。
そして相手が理解できたら、次の話へ進む。
この積み重ねだけでも、会話はずっとスムーズになります。
②「はい」と言ったから理解したとは限らない
「わかりました。」
そう返事をしてくれたとしても、本当に理解できているとは限りません。
人によっては、「わからない」と言うことが苦手だったり、「とりあえず返事をしておこう」と考えたりすることがあります。
そんな時は、
「じゃあ、一度説明してもらえる?」
と優しく確認してみると、お互いの認識のズレに気づくことができます。
③言い方を変えてみる
同じ言葉を繰り返すより、伝え方を変えるほうが理解しやすくなることがあります。
言葉だけでは伝わりにくければ、
・紙に書く
・写真を見せる
・実際にやって見せる
こうした方法もとても効果的です。
「伝わらない」のではなく、「伝え方を変える」という視点を持つことが大切です。
④ 「どうして?」より「何がわかりにくかった?」
「なんでできないの?」
「なんでわからないの?」
こう聞かれると、多くの人は責められているように感じます。
それよりも、
「どこが難しかった?」
「何がわかりにくかった?」
と聞いたもらえたほうが、本当の理由を話しやすくなります。
問題を探すのではなく、一緒に原因を見つける姿勢が大切です。
⑤ 相手を変えるより、自分の伝え方を変えてみる
人は「相手が変わればうまくいく」と思ってしまいがちです。
でも、相手を変えることは簡単ではありません。
だからこそ、自分の伝え方を少し工夫するだけで、会話が驚くほどスムーズになることがあります。
これは障害福祉の現場だけではなく、家庭でも、学校でも、職場でも同じです。
「伝わらない人」ではなく、「伝わる方法」がまだ見つかっていないだけ
話がかみ合わないと、つい「この人とは話が通じない」と決めつけてしまうことがあります。
でも、本当にそうでしょうか。
もしかすると、「話が通じない人」なのではなく、「まだその人に合った伝え方に出会っていないだけ」かもしれません。
人にはそれぞれ、理解しやすい方法があります。
言葉で理解する人もいれば、図やイメージで理解する人もいます。
一度で理解できる人もいれば、繰り返し聞くことでようやく整理できる人もいます。
つまり、「わからない人」がいるのではなく、「わかりやすい形が違う人」がいるだけなのです。
すれ違いは「悪いこと」ではない
話しがかみ合わないと、ついストレスを感じてしまいます。
しかし、すれ違いそのものは失敗ではありません。
むしろ、「どう伝えればいいか」を見直すきっかけになります。
すれ違いがあるからこそ、
「この言い方はどうだろう?」
「もう少し具体的にしたほうがいいかな?」
と工夫が生まれます。
コミュニケーションは、一度で完成するものではなく、少しずつ調整していくものです。
大切なのは「伝わったかどうか」を確認すること
伝えることに一生懸命になると、「言ったかどうか」で終わってしまいがちです。
でも本当に大切なのは、「伝えたか」ではなく「伝わったか」です。
そのためには、
・相手の表情を見る
・一度言い換えてもらう
・小さく区切って確認する
といった「確認のひと手間」がとても重要になります。
おわりに
話がかみ合わないとき、私たちはつい「相手の問題」として考えてしまいます。
でも視点を少し変えると、それは「関係をより良くするチャンス」にもなります。
伝わらないのではなく、まだ伝え方が合っていないだけ。
そう考えられるようになると、コミュニケーションは少しずつやさしく、そして楽になっていきます。

