「何度声を掛けても改善されない」
障害福祉や高齢福祉の現場では、こうした悩みに直面することがあります。
例えば、衣類の汚れ、体臭、入浴、身だしなみなど、生活面での衛生管理について支援が必要な利用者さん。
職員は本人の健康や周囲への配慮を考え、何度も声掛けをします。
「着替えてみませんか?」
「今日はお風呂に入りましたか?」
「少し身だしなみを整えてみませんか?」
しかし、何年経ってもなかなか改善されない。
それどころか、声を掛けると怒ってしまう。
「自分のことを否定された」
「何でそんなことを言われないといけないのか」
「自分は困っていない」
そんな気持ちが表れているのかもしれません。
では、このような時、支援者はどう関わることが正解なのでしょうか。
「できない」には理由がある
私たちはつい、「何度言ってもやらない」「本人に改善する気持ちがない」と思ってしまうことがあります。
しかし、本当にそうでしょうか。
本人にとっては、私たちが当たり前にできることが難しい場合があります。
例えば、
・汚れや臭いに気付きにくい
・着替えや入浴の手順が複雑に感じる
・生活習慣を変えることが苦手
・過去に注意された経験から拒否反応が出る
・自分の生活に踏み込まれることへの抵抗がある
など、本人なりの理由が隠れていることがあります。
「やらない」のではなく、
「どうしたらいいのかわからない」
「変えることが難しい」という可能性も考える必要があります。
注意することが支援とは限らない
衛生面の問題があると、支援者は「伝えなければ」と考えます。
もちろん、本人の健康や周囲の利用者さんへの影響を考えると、必要な声掛けはあります。
しかし、ただ繰り返し注意するだけでは、本人にとっては「怒られている」と感じてしまうことがあります。
「汚れていますよ」
「臭いますよ」
「ちゃんとしてください」
という言葉は、正しい内容であっても、本人の自尊心を傷つけてしまう可能性があります。
大切なのは、問題を指摘することではなく、一緒に方法を探すことです。
「どんな方法ならできそうですか?」
「全部変えるのは難しいから、まずは一つだけやってみませんか?」
「楽にできる方法を考えてみましょう」
という関わり方も必要になります。
変化を求めるだけではなく、現実的な目標を考える
何年も同じ課題が続いている場合、支援方法を見直すタイミングかもしれません。
同じ声掛けを続けて、同じ結果になるのであれば、違うアプローチを考える必要があります。
例えば、「毎日入浴する」という目標が難しい場合、
「週に何回か入浴する」
「服だけは定期的に交換する」
「清潔にする場所を一つ決める」
など、その人に合わせた小さな目標に変えることも支援です。
大きな変化を求めすぎると、本人も支援者も疲れてしまいます。
本人の尊厳と周囲への配慮
この問題で一番難しいのは、本人の自由と周囲への配慮のバランスです。
本人には、自分らしく生活する権利があります。
しかし、福祉施設は多くの人が利用する場所です。
他の利用者さんが安心して過ごせる環境を守ることも大切です。
だからこそ、「本人の自由だから何もしない」
でも、「改善するまで何度も注意する」でもなく、
その人に合った方法を探し続けることが支援なのだと思います。
支援に正解はない
何年関わっても変化が見えないケースはあります。
その時、支援者は「自分の関わり方が悪いのではないか」と悩むこともあります。
しかし、支援とは必ず結果を出すことだけではありません。
その人が少しでも安心して生活できる方法を一緒に探すこと。
本人の気持ちを理解しながら、必要な支援を続けること。
それが福祉の現場で大切な姿勢なのではないでしょうか。
「変える」ことだけに目を向けるのではなく、「その人にとって無理のない一歩は何か」を考える。
そこに、支援の大切な意味があるのだと思います。

