褒めるだけが支援ではない?

褒めるだけが支援ではない?

福祉の現場では、利用者さんへの声かけとして「褒めること」が大切にされています。

「すごいですね!」
「上手にできましたね!」
「頑張りましたね!」
「えらいですね!」

こうした言葉を耳にすることは少なくありません。

もちろん、褒めることが悪いわけではありません。

自分の頑張りに誰かに認めてもらうことで自信がついたり、「次もやってみよう」という意欲につながったりすることがあります。特に、これまで失敗を指摘される経験が多かった人や、自分に自信を持てない人にとって、肯定的な言葉は大きな力になることがあります。

しかし、ここで一度考えてみたいことがあります。
「褒めること」そのものが目的になっていないでしょうか。

「大人に対する“えらいね”」
たとえば、利用者さんが一日の作業を最後まで終えたとします。
そこで職員が、「〇〇さん、えらいですね!最後までできましたね!」と声をかける。

決して悪意のある言葉ではありません。
むしろ、頑張りを認めようとして出てきた言葉でしょう。

しかし、少し立場を変えて考えてみます。
一般の職場まで、同僚が仕事を終えたときに、「最後までできて、えらいね!」と言うでしょうか。

おそらく、

「お疲れさまでした」
「ありがとうございます」
「助かりました」
「きれいに仕上がっていますね」

といった言葉のほうが自然でしょう。

利用者さんも一人の大人です。
障害があることと、子どもとして扱うことは全く違います。

支援する側にそのつもりがなくても、「褒めてあげる人」と「褒めてもらう人」という関係が続くことで、いつの間にか上下関係のようになってしまうことがあります。

だからこそ、どんな言葉でも相手を認めるのかは、とても大切です。

「“すごい!”の中身を伝える」
何でも「すごいですね!」で終わらせるのではなく、もう少し具体的に伝えてみる方法があります。

「今日は最後まで集中していましたね」
「前より作業が丁寧になりましたね」
「確認しながら進められていましたね」
「〇〇さんが手伝ってくれたので助かりました」
「自分から分からないと言えましたね」

このように伝えると、本人にも自分の何が良かったのかが分かります。

これは単なる褒め言葉ではなく、その人自身が成長や得意なことに気づくためのフィードバックになります。

そして大切なのは、「結果」だけを褒めないことです。

完成したから褒める。
間違えなかったから褒める。
たくさん作業できたから褒める。

それだけでなく、

「途中で分からなくなったときに聞けた」
「疲れたときに自分から休憩を伝えられた」
「イライラしたけれど、その場を離れることができた」

そんな小さな変化も、その人にとっては大きな一歩かもしれません。

「褒めることと、認めることは違う」
支援の中で大切にしたいのが、「褒める」と「認める」は少し違うという視点です。
褒めるという行為には、どうしても「評価」が含まれます。

できたから褒める。
頑張ったから褒める。
良い行動だったから褒める。

一方で「認める」ということは、必ずしも評価することではありません。

「今日は来られましたね」
「今日はあまり集中できない日ですね」
「ちょっと疲れているように見えます」
「今日は自分から休憩を取りましたね」

その人の状態や行動を、そのまま受け止めて言葉にする。
大げさに褒めなくても、「あなたのことをちゃんと見ていますよ」というメッセージになります。

人はいつでも褒められたいわけではありません。
でも、自分の存在や頑張りを誰かに気づいてもらえることは、安心につながります。

「“褒められるため”に行動するようになることも」
もう一つ考えておきたいのが、褒めることへの依存です。
何かをするたびに、

「できました!」
「これでいい?」
「すごい?」

と職員の反応を確認する。

もちろん、それ自体が悪いわけではありません。
しかし毎回職員が大きく褒め続けていると、いつの間にか、

「自分がやりたいからする」ではなく、
「職員に褒めてもらうためにする」という形になってしまうことがあります。

本来目指したいのは、職員から評価されなくても、

「今日はここまでできた」
「昨日より上手くできた」
「自分なりに頑張った」

と、自分自身で感じられることではないでしょうか。

支援とは、職員がずっと横にいて評価し続けることではありません。
少しずつ、本人が自分で考え、自分で選び、自分で自分の成長に気づけるようにしていくことも大切です。

「失敗したときこそ支援が見える」
褒める支援を考えるとき、「できたとき」だけではなく、「できなかったとき」の関わりも重要です。

作業を間違えた。
途中で集中が切れた。
予定していたことができなかった。
感情的になってしまった。

そんなときに、

「今日はダメだったね」で終わらせるのではなく、
「どこが難しかったんだろう?」
「次はどうしたらやりやすいかな?」と一緒に考える。

できたら褒める。
できなければ注意する。

それだけではなく、できても、できなくても、その人と一緒に考える。
そこに支援の大切な部分があるように思います。

「“ありがとう”が一番自然なこともある」
利用者さんが作業をしてくれた。
誰かを手伝ってくれた。
片付けをしてくれた。

そんなとき、必ずしも「すごいですね!」と言う必要はありません。

「ありがとう」
「助かりました」
「お疲れさまでした」

それで十分なこともあります。
むしろ、そのほうが一人の大人として対等な関係に近いのかもしれません。

福祉だから特別な言葉を使うのではなく、私たちが普段、人と人との関係で使っている自然な言葉を使う。それも大切な支援の一つです。

「“褒める支援”から“認める支援”へ」
褒めることをやめる必要はありません。

嬉しいときには一緒に喜ぶ。
頑張ったときには「頑張りましたね」と伝える。
できるようになったことがあれば、その成長を一緒に喜ぶ。

それでいいと思います。

ただ、何でも褒めれば良い支援になるわけではありません。
大切なのは、その言葉が誰かのための言葉なのかを考えることです。

利用者さんを動かすための言葉になっていないか。
職員が「良い支援をした」と安心するための言葉になっていないか。
そして、一人の大人として相手を尊重した言葉になっているか。

「すごいですね!」だけが支援ではありません。

「ありがとう」
「助かりました」
「昨日と少し違いますね」
「どう思いました?」

そんな何気ない言葉のほうが、その人の力を引き出すこともあります。

褒めるのではなく、認める。
評価するのではなく、一緒に気づく。

そんな関りが増えていくことで、利用者さんと職員の関係も、「支援する人・される人」だけではない、もっと自然な人と人との関係になっていくのではないでしょうか。