利用者さん日記~私にとって必要な力~

利用者さん日記~私にとって必要な力~

支援の現場では、時に「自我を抑えられない」と表現される利用者さんに出会う事があります。自分の要求を強く通そうとしたり、感情が一気に溢れてしまったり、周囲とのバランスよりも“今の自分の気持ち”が前面に出てしまう場面もあります。

その姿だけを見ると、周囲はつい、

「わがまま」
「自己中心的」
「我慢が足りない」

と感じてしまう事もあるかもしれません。
しかし支援を続けていると、その行動の奥には単純な“わがまま”だけでは片付けられないものが見えてくる事があります。

本当は、

・不安な気持ちをどう表現したらいいか分からない
・自分の感情を整理する事が難しい
・頭の中が混乱すると言葉が出なくなる
・「待つ」という感覚が強いストレスになる
・否定される事への怖さが強い
・認められたい気持ちが強い

など、本人の中にも“苦しさ”や“困り感”がある場合も少なくありません。

つまり、「自我を抑えられない」のではなく、“自分の気持ちをどう整えたらいいのか分からない”状態なのだと思います。だからこそ、利用者さんに本当に必要なのは、単に「我慢する力」を身につける事ではありません。

必要なのは、「自分の気持ちを整理し、安心して、適切に伝えられる力」です。

例えば、自分がイライラしている事に気付ける力。不安や悲しさを言葉に出来る力。
「今は待つ時間なんだ」と少しずつ切り替えられる力。そして、「ちゃんと聞いてもらえる」という安心感。

そうした土台が少しずつ積み重なる事で、人は感情を整えられるようになっていきます。

反対に、不安が強い状態では、人は自分を守ろうとして感情が大きくなりやすくなります。

強い言葉になる。
要求が増える。
感情的になる。

それは周囲から見ると“問題行動”に見えるかもしれません。しかし本人にとっては、「自分を守る為の必死な表現」になっている事もあります。

勿論、だからと言って全てを受け入れるだけでは支援にはなりません。時にはルールを伝える事も必要ですし、相手との距離感や社会性を学ぶ場面も大切です。

ただ、その時に大事なのは、“押さえつける事”だけを目的にしない事だと思います。

「なぜ今こうなっているのか」
「何に困っているのか」
「どうすれば安心して落ち着けるのか」

その背景に目を向けながら関わる事で、利用者さん自身も少しずつ“自分を整える方法”を学んでいきます。
そして、その力は一日で身につくものではありません。小さな成功体験の積み重ねの中で育っていくものです。

・落ち着いて伝えられた
・待つ事が出来た
・話を聞いてもらえた
・感情を言葉に出来た
・「ありがとう」と認めてもらえた

そうした経験が、「次も頑張ってみよう」という安心感に繋がっていきます。

支援者に求められるのは、“問題だけを見る視点”ではなく、“その人の背景を見る視点”なのかもしれません。

「どう抑えるか」ではなく、
「どうすれば安心して整えられるか」。

その視点を忘れず、一人ひとりの気持ちに寄り添いながら、これからも支援に向き合っていきたいと思います。